iPhone雑感
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友人から、iPhoneについて以下のような質問
「うちの部内でもデザインディスカッションみたいなことをするんだけど、次のお題がiPhoneなのよ。iPhoneってどう。少なくとも、目の不自由な人も扱えるという点では、女子高生御用達HoneyBeeのボタンはかなり良いユニバーサル物だよなと思っているんですが、やっぱり物としての総合的魅力でAppleに軍配なのかな? 使ってみてどう?」
操作デバイスがユーザーを限定することはよくあります。タッチパネルは、触覚が頼りにならないので目の見えない人のみならず、ブラインドタッチや素早く操作する時(文字入力等々)には向いてないかもしれません。またiPhoneは静電式センサーのタッチパネルを採用しているので、指の腹にしか反応しません。よって爪でボタンを押す女性ユーザーには使えません。
しかし、だからといって一概にタッチパネルを否定することは出来ません。機能が多くなるにつれ、一つのボタンが複数の機能を有してしまう宿命を持っているのが、ハードキーです。小さなボタンに表示がいくつも並ぶのは決して使いやすいものではないでしょう。
ユニバーサルデザインというのは、「誰でも使えるかどうか」を指しているのであって、「誰でも使いたくなるか」とは異なります。身体的に許容できるのと、感性的/嗜好的に許容できるのとは必ずしも一致しないのです。と考えると、iPhoneがいいかどうかは、ターゲットとするユーザーによって異なるというのが正しい見解だということになります。
さてここからは、実際に使ってみての感想です。
私自身は、触覚に頼らなくても操作できるので、タッチパネルによる可能性を享受し、非常に満足しています。特徴的なことはドキュメントの閲覧でしょう。iPhoneはメール添付されたワード、エクセル、パワーポイントデータをそのまま見ることができます。ここまでは他のケータイでも出来るのですが、それを閲覧する操作方法が快適で”見る気”にさせてくれます。小さな画面でドキュメントを見るためには、拡大、縮小、移動の動作を頻繁に行うことになりますが、これが快適にできないと思考を分断され見る気を殺がれます。ハードキーですと、拡大、縮小、移動がそれぞれボタンに割り付けられるので、自分がやりたい操作が、どのボタンに該当するのか翻訳しなければならない。結果、直感的に操作ができない。タッチパネルは、移動は指を移動されればいいし、拡大は指を広げればいい。
ドキュメントと同時に、地図の閲覧性も非常にいい。地図を見るときも、拡大、縮小、移動をしますよね。これをハードキーで割り付けられるとどうも使う気になれない。また、最近では地図の現在位置の追従性、道案内も精度が上がってきていますので、カーナビもいらないかなと思えるほどです。最近リリースされたiPhone用アプリに新聞がまるごと見えるもの(上写真)がありますが、非常に快適に読めて(しかも無料)、いずれ紙媒体としての新聞はなくなるのでは?とも思わせるものです。
ここで「そもそもインターフェースとはどうあるべきなのか」を考えてみます。
「Hand Eye Coordination (ハンド・アイ・コーディネーション)とは、平たく言えば手と目を協調させること。目で物体を見て、それを手で触れて動かすと、その手の動きにあわせて物体も動く。子供は一歳から二歳にかけて、この目の動きと手の動きとの相関関係を自然に学び、身の回りにある様々なものとの関わりを築けるようになる。」
本文引用:iPhoneショック(林 信行著) P131
「Direct Manipulation (ダイレクト・マニュピレーション)とは、画面上に表示させるオブジェクト(仮想の物体)を、メニューの選択などを通して間接的に操作させるのではなく、直接触るように操作させること。例えばパソコン操作でよくあるドラッグ&ドロップ操作、つまりアイコンをマウスで直接ドラッグし、別のアイコンと接触させて反応を起こさせるという操作も、ダイレクトマニュピレーションの一例である。」
本文引用:iPhoneショック(林 信行著) P131
「認知科学の権威で、元アップル先端技術グループ副社長でもあるドン・ノーマン博士に、もっとも望ましいインターフェースを尋ねところ、インターフェースはそもそも邪魔なもの、理想は「介在しないこと」だ。 ~中略~ メニューやボタンを介さずオブジェクトに直接働きかける「ダイレクトマニュピレーション」と呼ぶ手法」
本文引用:iPhoneショック(林 信行著) P140
Direct Manipulationを実現するのに、もっとも適した操作デバイスは、いうまでもなくタッチパネル。と考えると、あるべきインターフェースは、ハードキー方式かタッチパネル方式かといった議論ではなく、タッチパネル方式にハードキーのような触感的な感覚が搭載されるのが理想だといえると思います。
次に、iPhoneが日本で普及しない背景について考えてみます。インターフェース自体は高次元であるとは思いますが、そもそもPC接続が前提であること、キャリアが限定されていること、ワンセグ/おサイフケータイなどの機能がないこと、そして文字入力の変換精度と絵文字未対応(絵文字は対応が始まったが同じキャリア同士が前提)が、日本で普及しない要因と言われています。
しかし、世界的にみればかなりの影響力を示しています。
「iPhone 3Gの販売台数は、7月11日の発売から9月27日までに690万台を記録 ~中略~ Steve JobsがEarnings Callのなかで、"Appleが世界第3位の携帯メーカーになった"、という興味深い発表をしています。携帯電話メーカーをRevenue(売上?)でランキングしたもので、 Nokiaサムソンに続き、アップルが第3位になっています。」
出展元:アップル、3ヶ月で690万台のiPhone 3Gを販売。世界第3位の携帯メーカーに
「iPhoneが販売されて約2ヶ月立ちましたが、産經新聞の記事で一定のヒット商品とはいえるが、20万台前後で止まっている感がある」らしいです。」
出展元:iPhoneの売り上げについて
「2008年7月度の移動電話国内出荷台数は3,779千台」
「2008年8月度の移動電話国内出荷台数は2,166千台」
「2008年9月度の移動電話国内出荷台数は2,317千台」
出展元:JEITA 2008年 移動電話国内出荷台数実績
日本市場の携帯電話総出荷台数が800万台(7~9月)に対して、iPhoneは全世界に690万台(7/11~9/27)出荷しています。日本だけを見て、iPhoneが成功していないとするのは早合点で、日本市場の特殊性に対応できていないとみるのが妥当な判断。ここでもiPhoneがいいかどうかは、ターゲットとするユーザーによって異なっていることがわかります。
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