2008年 06月 15日
迷走する点字ブロック
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点字ブロックは、1965年に日本で生まれたものだということをご存知だろうか?
『発明したのは岡山県に住む三宅精一さん。「失明した友人が、安全に街を歩ける方法はないか」と考え、「交差点など危険な場所に凹凸をつければ、目が見えなくても足の裏でわかるはずだ」とひらめきました。私財を投げ打ち、アイデアを実現化した三宅さん。試作品をつくっては県や市に寄贈し、普及を図ろうとしていました。』
出典:あなたの知らない点字ブロックの話
以降、メーカーや管理者毎に様々な点字ブロックが生み出された。結果、形状が異なる点字ブロックが混在しユーザー(視覚障がい者)が混乱をきたす状況が生まれてきたという。その後、JR(当時 国鉄)での視覚障がい者がホームから転落する事故をきっかけに、規格化が進められ平成8年に点字ブロックの統一規格がJISに制定された。そして現在、黄色いブロックは至る所で見かけるようになった。
こうして日本で生まれた点字ブロックは、徐々に海外にも普及していったという。
ここで私が旅行した先で収集した海外の事例を紹介したい。
オーストリア
かなりグレーッシュでローコントラスト。凹形状と凸形状のタイプが混在している。警告ブロックと誘導ブロックの使い方もまちまちだ。
こんなかわいそうな事例(下写真)もある。故意に怪我をさせたいとしか思えない。
チェコ
あまり点字ブロックらしいものを見かけなかったのだが、以下のような事例があった。申し訳程度につけられた凹凸。果たして認知に足りうるのか?
確信はないが、おそらく横断歩道を識別させるため形状が異なるブロックを敷設しているものと思われる。(下写真)
デンマーク
果たして一本線の誘導ブロックが有効かどうかは定かではないが、景観上は好ましい。
デンマークではこのタイプ(下写真)が一般的である。色覚異常者に対してのガイドにはならないが、景観との相性はいい。
こんな事例(下写真)もある。景観への配慮を最大限考慮し、凹ブロックと凸ブロックを組み合わせ点字ブロックの存在を消し去ろうとしたもの。詳しくはコチラに解説してあるので是非見ていただきたい。
オランダ
日本の点字ブロックに非常に類似したタイプ。ブロックの使い方(危険な箇所には警告ブロック)も適切だ。
警告ブロックを黄色、誘導ブロックを白色にしている。
この警告ブロック(下写真・黄色のブロック)は果たして認知足りえるのか?既に擦り切れて殆どフラットになっている。
白黒のタイプもある。
こんな新種も発見。波形状とは?!?!
台湾
こちらもお作法通りといったところか。ただ駅など公共機関には敷設されているが、街にはまったく敷設されていなかった。
黄色い細いラインの手前に、グレーの点字ブロックがあるのがわかるだろうか?
北米(サンフランシスコ)
こちらも規定演技。ただ台湾と同じように街の中には一切、点字ブロックは存在していない。
フランス(ニース)
曲がり角のブロックを見て頂きたい。警告(ドット)と誘導(ライン)を組み合わせた新種。
イタリア
街の中では見かけなかったと思う。下写真は空港だが、ほぼ規定演技として敷設されている。フランスと同じように曲がり角のブロックがユニークだ。
各国 様々な点字ブロックが敷設されていることが良くわかる。
『日本で誕生した点字ブロック。今や海外でも注目され、今度はISO(国際標準化機構)で国際基準をつくろうという流れになっています。 ~中略~ 「いいものだ」と、輸出されたのはいいけれども、それがまちまちに使われていると、視覚障害の方がまたそこで戸惑ってしまいますものね。』
出典:あなたの知らない点字ブロックの話
グローバルに統合化を進め、ワールドワイドに視覚障がい者のアクセシビリティを確保するのは大切なことだと思う。しかし、世界中の町並みで「黄色いブロック」を見せられるのはいかがなものか。特に歴史的な遺産などの景観に対しては十分に配慮されなければならない。
国によっては、点字ブロックを敷設するところを駅・空港などの公共空間に限定しているところもあるようだ。私の視覚障がい者の友人の一人は、そもそも点字ブロックをあてにしないという。自分の目的地まで全て敷設されているのは皆無で、結局の所、他の手段で位置を認知しないといけない。そもそも街の道に全て敷設されること自体、不可能だろうと。ただ最低限、電車のホームなど危険な箇所には警告ブロックが欲しいという。
ISOの国際基準では、形状・色だけではなく、景観にも十分に配慮した敷設方法も定義して欲しいものだ。
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by isoamu
| 2008-06-15 10:09
| ユニバーサルデザイン