2008年 01月 20日
「使いやすさ」を購買に繋げるには・・・
|
『アップル社内に「スティーブ・ジョブスの5分ルール」と呼ぶ法則があるというのだ。「店頭でユーザーの関心を5分以上惹きつけられたら、その製品は成功する」というものだ。』
本文引用:iPhoneショック(林 信行著) P139
「使いやすさ」は購入して実際に使ってみなければ、その価値を理解できない。よって一般的には「使いやすさ」は外観など「審美性」に対し購入の決め手になりにくい。しかし、購入を検討する際、店頭で少しは操作することがある。冒頭の引用文は、その店頭での短い時間でも「使いやすさ」が訴求され、購入の決め手になりうる事を示唆している。
さて、この数分で感じられる「使いやすさ」というのは、一体どのようなものか。「iPhoneショック」(林 信行著)の記述に私の解釈を加えて以下のようにまとめてみた。
1)操作の軽快さ
2)画面の動き(アニメーション)
3)自然な操作
・Hand Eye Coordination
・Direct Manipulation
上から順に説明していきたい。
1)操作の軽快さ
反応が鈍い製品は「使いにくさ」を冗長させる。ユーザーはボタンを押してすぐ反応しないと「ボタンの押し方が悪かった」と勘違いし、またボタンを押す。そして、ようやくシステムが反応した時には再度ボタンが押されているから、システムはまた反応しようとする。結果、ユーザーにとって思いもしない反応を返してしまうことになる。これが店頭で製品を触った数十秒の間に起こっていたとすると、その先は想像に難くない。
これは、新しいデバイスを採用した製品によくある。新しい操作性で商品価値を上げようと開発をスタートしてが、チューニングが不十分でリリースされた製品は多い。新デバイスを採用した時点で終わったと勘違いしてしまうのか、そしてまもなく市場から消えていく。iPhone、Wiiなどあの軽快な操作にはきっと多くの時間がチューニングに費やされている筈だ。
ただ反応の鈍さは、部分的ではあるがごまかすことが出来る。
「iPhoneのカメラ機能は起動してから撮影できる状態になるまで少し時間がかかる。この間、画面が止まってしまうとストレスに繋がる。そこで、iPhoneでは、カメラ機能を起動すると、まずはシャッターの羽絞りが閉じている絵を表示して、カメラモードに切り替わったことをユーザーに知らせるようにした。 ~中略~ たったこれだけのアニメーション効果が、ただの待ち時間を、楽しい体験に変えてくれる」
本文引用:iPhoneショック(林 信行著) P134
関連エントリー:スペックだけではない。
因みに、多くのデジタル製品のオープニング画面は、こうした理由によるものだと思う。
2)画面の動き(アニメーション)
「例えばアドレス帳の情報を表示し、~中略~ いきなりピタッとスクロールが止まるのではなく、勢い余って少し行き過ぎてから、バネに引き戻されるような動作でアドレス帳の終端に引き戻されるのだ」
本文引用:iPhoneショック(林 信行著) P136
ちょっとしたことなんだけれども店頭の数十秒の間で、ユーザーの心を掴むのに非常に有効であるはず。しかし、こういうことになかなか価値を認めてくれないと嘆くインハウスデザイナーも多いはず。一緒に頑張りましょう。
3)自然な操作
①Hand Eye Coordination
「Hand Eye Coordination (ハンド・アイ・コーディネーション)とは、平たく言えば手と目を協調させること。目で物体を見て、それを手で触れて動かすと、その手の動きにあわせて物体も動く。子供は一歳から二歳にかけて、この目の動きと手の動きとの相関関係を自然に学び、身の回りにある様々なものとの関わりを築けるようになる。」
本文引用:iPhoneショック(林 信行著) P131
インターフェースの基本であるように思う。こうしたことが考慮されて始めて感性に訴えかけられるものになるのだと思う。
②Direct Manipulation
「Direct Manipulation (ダイレクト・マニュピレーション)とは、画面上に表示させるオブジェクト(仮想の物体)を、メニューの選択などを通して間接的に操作させるのではなく、直接触るように操作させること。例えばパソコン操作でよくあるドラッグ&ドロップ操作、つまりアイコンをマウスで直接ドラッグし、別のアイコンと接触させて反応を起こさせるという操作も、ダイレクトマニュピレーションの一例である。」
本文引用:iPhoneショック(林 信行著) P131
「認知科学の権威で、元アップル先端技術グループ副社長でもあるドン・ノーマン博士に、もっとも望ましいインターフェースを尋ねところ、インターフェースはそもそも邪魔なもの、理想は「介在しないこと」だ。 ~中略~ メニューやボタンを介さずオブジェクトに直接働きかける「ダイレクトマニュピレーション」と呼ぶ手法」
本文引用:iPhoneショック(林 信行著) P140
「ノーマン博士は1994~95年頃に開発者向けイベントなどで、~中略~ その重要性を説いてきた。」
本文引用:iPhoneショック(林 信行著) P141
こうしたのを読むと、付け焼刃でAppleの真似事をしても追いつけないんだろうなと思ってしまうが。こうしたことが、まさしく自然に使えることに繋がるんでしょうね。スッとこの製品の世界に入れて、それが「使いやすい」と感じさせることになる。
以上、「使いやすさを購買に繋げるには・・・」 大きく3点。
1)操作の軽快さ
2)画面の動き(アニメーション)
3)自然な操作
・Hand Eye Coordination
・Direct Manipulation
狙いを定めて戦略的に進めたいですな。
___
応援のクリックを!
by isoamu
| 2008-01-20 22:36
| ユーザビリティ