Good Design Presentation 公開審査
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カーデザイナーの議論がどんなものか、興味津々で聴講させて頂きました。
4社のカーデザイナーのプレゼンに対し、審査員が質問するという形式(その場で評価はしない) 最初は審査員もぎこちなかったのですが、後半になるにつれ徐々に調子が出てきたようですね。中でも、沢村慎太郎さん(自動車評論家)の発言は分かりやすくキレがありました。各カーデザイナーが準備してきたスライドとムービーもリッチでしたね。中には社内向けをそのまま持ってきたものもあるようですが、社内向けであのクオリティは驚きです。
印象に残ったのは、彼らから出てきた「カタチに対する形容詞が多彩」なこと。
・安心感
・エレガント
・ダイナミックさ
・力強さ
・モダン
・クリーンでシンプルな面質
・エモーショナル
・ハリのある面構成
・動感
・端整な
・ソリッド感
・ホスピタリティあるれる
・ソリッド&ファンクショナル
・オーガニックな
・情緒感
以上は、比較的分かりやすいものですが、ここからDeepな世界に入ります。
・凝縮感
・プレーン感
・囲まれ感
・道具感
・塊感
・しっとりとした面質
・乾いた面質
・スリークでスムーズな形 ????
こうも”抽象的”かつ”主観的”な表現を駆使するのが、カーデザイナーの特色なのでしょうか。あの聴衆の中で、こうした形容詞を半ば面白がってメモしたのは私ぐらいでしょう
ヾ(´▽`;)ゝ
さて、審査員のプレゼンテーターに対する質問は「設定されたコンセプトをどう達成したのか」についてが多かったのですが、私が気になったのは、そもそも その「達成度合い」についてです。
それぞれのデザイナーは、設定したコンセプトに対して、先に紹介したような「カタチに対する”抽象的な”形容詞」を駆使して、イメージを共有しながら進めていると思います。しかし、”抽象的”であるため、”達成度合い”も主観的で曖昧に成らざるを得ません。
スタイリングという極めて”抽象的な”要素をデザインするにあたり、当然、”抽象的な”形容でコミュニケーションをとる必要はあるでしょうが、全てのプロセスでこうした思考が蔓延していないかどうかが気になります。(「○○っぽいよね? うんうん、なってるなってる。 いいんじゃない」みたいな)
審査員の最後のコメントの中に「エモーショナルな部分に着目した方向性が多かったが、サスティナブル(持続可能性)など、社会問題に真っ向から挑戦するデザインもあっていい」というものがあったように思います。こうした課題にチャレンジしていくためには、”抽象的”な言葉で目標を設定するのではなく、”具体性”のある言葉で目標設定する必要が出てくるように思います。
・エコロジー感
・地球にやさしい感
・省エネ感
では、済まされない。
地球環境を語るのであれば、そのデザインによる具体的な効果まで言及する必要があります。目的に応じて、使う形容詞(=思考そのもの)を変えていく必要があると思います。
帰りの電車でプロダクトデザイナーの友人と、たまたま「3D CAD」の話になりました。彼は、サーフェースとソリッドを両方使いこなしているとの事。
私が「ソリッドは、ツールの限界性能によって発想が制限されるのではないか?」と質問すると、彼は「発想する時と、設計に提供する時とで、ツールを使い分けている」 「発想を優先する場合はサーフェース、設計に提供するデータはソリッド」 「右脳と左脳をバランスよく使うようなもの」とサラリ。(私にとって驚きなのは、彼の「ソリッドデータ」には、抜きテーパー、リブなど金型データに近いレベルまで反映されているということ)
我々デザイナーは、右脳と左脳をバランスよく行き来して、デザイン活動をしていくべきですよね。それが、エモーショナルとサスティナブルが両立したデザインに繋がるのだと思います。



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