2006年 11月 25日
鯨尺の法則―日本の暮らしが生んだかたち
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日本人デザイナーであるならば、日本文化(アイデンティティ)を生かさない手はない。この本に挙げられたモノたちは、今のマンション生活にはなかなか適応しにくいものもあるが、合理的でシンプルな考え方は適応できるのではないだろうか?単なるスタイルでJapanese Designを捉えるのではなく「考え方」そのものを生かせたらと感じさせる。作者はこの分野の専門家ではない。美大出である。よって専門的な解説ではなく一般の人の視点、デザイナーとしての視点で語っているのも分かりやすくて良い。日本風を謳うのであれば是非読んで頂きたい
またその「考え方」は「作り手の意思」によるものではなく「日本の気候」「農耕民族からくる気質」「素材の特性」からもたらされたものが多いのも興味深い。先日見た「My Archtect」の建築家ルイス・カーンもこんなことを自身の講演で言っていた。「まずレンガ(素材)に聞きなさい。窓枠のアーチはレンガがそうしたいとしたから、あのようになったのです。」
かの深澤直人氏も日本文化に対しては造詣が深い(らしい)。「デザインのデザイン」原 研哉著によれば、深澤氏は原氏に「陰影礼賛を読みなさい」と進めたと聞く。陰影礼賛は昭和初期に書かれたエッセイ。照明の普及により身の回りがどんどん明るくなるにつれ、日本人の光に対する高い感受性がそれによって失われる事を憂いている。
私の学生時代も「侘び寂び」をテーマに照明をデザインしたことがあったっけ。その頃は表面的な捉え方していなかったが。
本書で挙げられた「日本のモノの考え方」を整理。コンパクトに暮らしを納める知恵たちです。
■合理的にモジュール化されているモノたち
・機織をする人の肩幅→反物の幅→着物の大きさ(着物の袖先から袖先の長さ→反物の幅4つ分)→箪笥の大きさ
・藁の長さ→畳の幅→部屋の大きさ→建屋の大きさ
・自由に入れ替えが出来るように規格化された襖、障子、畳
・いくつも並べられるニ月堂
■狭い建屋に合わせてコンパクトに収納出来るモノたち
「パタパタと畳める屏風」「丸められる掛け軸」「丸められる簾」「重ねられる入れ子のお椀(参考:秋岡芳夫「応量器」)」「重ねて収納できる座布団」「畳んで収納する布団」「ワンパッケージに収納できる入れ子の弁当箱」「脚をたたんで収納できるニ月堂」「寒いときだけ出して暖をとる火鉢」
■リフォーム、リサイクルが容易なモノたち
着物は直線裁ちで一定のサイズ、洋服のように着る人の凹凸に合わせて立体裁断しないからリフォーム、リサイクルが容易
by isoamu
| 2006-11-25 01:10
| デザイン全般