2012年 03月 25日
多様性への理解、そのツールと行動変容について
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私もモビリティ関連でお手伝いしている「ピープルデザイン研究所」が「コミュニケーションチャーム」(上写真)を製作しました。ルイ・ヴィトンのデザイナーがデザインし、製造工程の一部を渋谷区内の福祉作業所で担っています。
妊婦さんがもつ「マタニティマーク」は”自分の状態”を周りに知らせ、周囲からの”サポートを受けることを促す”ものですが、これはサポートする”自分の気持ち”を周りに知らせ、障害をお持ちの方や外国人などへ”サポートすることを促す”もの。これには「コミュニケーションカード」がついていてトイレやホームの場所などアイコンを指差しでコミュニケーションできるようになっています。これが街で広がれば、街は過ごしやすく魅力的なものになるかもしれません。
相互扶助しうる関係性をつくるためには、そういう意志を周囲に伝えることがとても大切。そしてそもそも互いの特性を共有することも必要でしょう。視覚障がい者が使う白杖は歩行をサポートするツールであるのに加え、視覚障がいがあることを周囲に伝えているツールでもあります。「道路交通法14条」において視覚障害者は白杖を使うことが定められているのですが、ドライバーや周囲の歩行者にそれを知らせ配慮を促すためのものなのです。
一方で、それを本人が望むのかという視点もあります。道路交通法では”聴覚”障がい者も白杖を使うことを明示しています。ただ歩行に不便がないのであれば、荷物が一つ増えて面倒というのが当事者の本音。そして「わざわざ自分のこと(聴覚障がい)を伝えたくない」という気持ちもあるといいます。
当然のことですが、ツールが万能ではないということを私たちは知っておかなければなりません。ツールに頼らずとも困っている人がいれば助け合う、そういうマインドセットをどう醸成していけるか。そのためには、それぞれが個性をもったマイノリティであることの気づきが肝要です。
女性が妊娠すると様々な障害を抱えることになります。つわりの時期には、今まで苦にならなかった駅からスーパーまでの道のりが信じられなく遠いものに感じる。ここでようやく、なぜ途中にベンチがあって、なぜそこにおばあちゃんが座っているのかに気づくのです。当事者の気持ちを理解出来た時に、ようやく行動変容に繋がります。
これは、そういう身体状態にならなくとも、誰しも何かしらの障害(特性)があることを共有することが出来ます。左利きなどは典型で、この社会が右利き用に創られていることを共有できるでしょう。様々なアレルギーも障害の一つ。うつ病などのメンタルな特性も、今では増えてきました。障害を自分事として捉えることで、一般に”身体障害者”と定義づけているものが、いかに曖昧なものであることに気づいていくことです。
そして、さらにこうした特性が、様々な効用を生み出すことを知ると、サポートする、されるという一方的な関係性ではなく、互いに有用な存在同士であるフラットな関係性構築に繋がります。「ダイヤログ・イン・ザ・ダーク」は目が見えないからこそ、感じられることがあることを気づかせてくれます。そして、目の見えない方に美術鑑賞をサポートするボランティアがありますが、それはサポートする側が感謝の気持ちを持つといいます。障害=不便ではなく、そこから得られるポジティブな効用を発見していくことで、あるべき関係性構築に繋がっていきます。
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by isoamu
| 2012-03-25 21:23
| 福祉