階段があってもバリアフリー 〜営業戦略としての福祉〜
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店舗におけるバリアフリーというと、”スロープをつけないといけない”と考える事業主が多いのではないでしょうか。この事例は、スロープの代わりに”呼び出しボタン”を入り口につけて、人的サポートで対応するもの。
事業主にとってはスタッフの業務負荷が気になりますが、これによって顧客との交流が生まれるという副産物があります。顧客には”丁寧な対応をしてもらった”という好印象を感じてもらえるかもしれません。
これは渋谷宮益坂上の松屋なのですが、通常のカウンター席も座面が低いものにして、車椅子ユーザーに対応しています。そしてトイレにもスロープと車椅子が入れるような広さをもったものにしています。
多くの事業主は”車椅子ユーザーはニッチ”と捉えがちですが、特に飲食業において、車椅子ユーザーという当事者と一緒にその友人も顧客となりうる可能性を見逃してはないでしょうか。そして、居酒屋などのアルコール販売をするところは、是非トイレの改善をご検討頂きたい。車椅子ユーザーの中には、店内のトイレが使えないためにアルコールを控える方もいらっしゃいます。そして、トイレ内の写真をWebで公開した方がいい。稀に”バリアフリー対応”となっていても使えないケースがありますが、対応基準の設定でバラツキが出るのに加え、同じ車椅子ユーザーでも障害の度合いによって使えるハードウェアの仕様は大きく異なるから。トイレの写真を掲載すれば、使えるかどうかかなりイメージ出来るといいます。
そして身体障がいを持つ方々の、アクセシブルな製品やサービスに対する情報欲求はとても高い。いい事例があるとあっという間にネットワークで広がっていきます。障がいを持つ方々を、営業戦略として位置づけられる可能性がここにあります。
サービス提供者がこうしたセンスを持ちうるためには”当事者との交流をもつこと”。通常のマーケティングにおいて、ユーザーの声に耳を傾けるのは当然ですが、当時に発せられた要求のどれを選択するかも重要なこと。顧客である障がい者からの要求を鵜呑みにするのではなく、会話や生活の様子を観察することで、適切な解は見つかります。(誰だって、聞かれれば、要求は際限なく出てきますからね)
特に福祉領域は全般に、ごくごく普通のマーケティングセンスが欠落しているように思います。それは支援する、支援されるという固定観念に陥ってしまっているから。欧州と比べ日本は、ついつい相手を慮ってしまう傾向が強いように思います。
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上記リンク集