2011年 05月 07日
日本のために売れるべき本「コミュニティデザイン」
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「コミュニティデザイン―人がつながるしくみをつくる」山崎 亮 (著)
”デザイン”と銘打ったもので、これほど”モノ”が登場しない本に出会ったことはなかった。そのほとんどが笑顔の人々の写真だ。
「モノが売れる時代じゃない」なんていうのはもう耳タコだけど、日常のどうしようもない現実の前に、きっと僕らはそれを心の隅に押し込んでいたはず。でも、ここではそうした日本の課題のド真ん中を突いた解決事例に溢れている。私は「こんなことができるのか!」という驚きと、時折ウレシくてウルウルしながら読んだ。
”ユーザー・住民参加型プロセス”なんていうけれども、この本を読むとこれまでの観念が完全に払拭される。今までやってきたことがとても小さく思えてしまう。今までのはあくまで”モノを作るための参加型”で、主体が作り手だった。でもここでは参加したユーザー・住民のコミュニティを作ってしまい、そのコミュニティがハードを使いこなしていく。モノに対する主体を、完全に作り手から使い手に移してしまうわけだ。これこそ本質的な”ユーザー・住民参加型プロセス”だろう。
今後、「コミュニティデザイン」はいろいろな領域に広がっていくように思う。企業におけるチームメイキング、人材育成などの研修はさることながら、製造業における商品開発プロセスにコミュニティ形成を取り込んでもおもしろそうだ。商品が勝手に育っていく醍醐味がありはず。観光業界においては、上からドンとコンテンツを下ろす開発手法ではなく住民恊働での持続維持しうる観光資源開発に繋がるはずだ。各地に点在する遊休施設の再活用には多くの自治体が頭を悩ませているはずだが、コミュニティデザインを取り入れれば有用な街の資源にすることができるだろう。企業内デザイン部門においては、単にモノを作る請負だけでなく、その企業内におけるコンサルティング業務展開への参考になるはずだ。
デザイン系学生にも、是非デザインの可能性として読んで欲しい。読めばきっと「先生、それって意味あるんですか?」と突っ込みを入れられるはず(^_^) 都市工学系の学生は言うにおよばず、社会活動に興味のある学生も読んで欲しい、そのには具体的な解決事例を持って様々なプロセスが紹介されている。
弊社が運営する「ユルツナ」には、「山崎さんのインタビュー記事」を掲載している。是非こちらも合わせてご覧頂きたい。
コミュニティデザイン―人がつながるしくみをつくる
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山崎 亮
学芸出版社
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by isoamu
| 2011-05-07 01:16
| デザイン全般