無法地帯デンマーク
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私の講演を聞いた知人は「(デンマークの社会保障など)いいのはわかる。ただそれらが幼いことから育まれた価値観ゆえのものならば、今僕らには何ができるのか」と。このビデオはその導入こそ”無法地帯”であるが、中盤には”充実した社会保障と高い幸福感”に触れ、最後にはそれらは”自由と平等の精神が根底にあるからだ”と締めくくられる。当然その精神は一朝一夕に構築されたものではない。当然、おいそれと僕らが真似られるものではない。
ただデンマーク自体も日々揺らいでいるという。メディアは常にセンセーショナリズムとあるシナリオにそって情報選別するから、デンマークの多様な一面は見えてこない。二大政党は自由主義経済と社会主義経済を争い、一部からは、今のデンマーク人世代は甘美な自由主義経済に取り憑かれているという。「デンマークのうちがわ」では負の部分を綴り、客観的な視座を得ることを提案する。完璧な制度などこの世の中に存在しない。そして、日本人には”日本人の価値観”を前提としたもの(日本人にあったもの)がありうる、という理屈は理解できる。
先の「僕らに何ができるのか?」に対する答えは「自分の生き方を問い続けること」じゃないかと思う。その答えが”他者比較で決定されるものではなく自身の心の中にある”ということに気づけば、デンマークと比較すること自体に意味がないことに気づく。彼らの方法論を追いかけているうちはきっと幸せになれない、だって答えは外にないから。そしてこの問いかけは、あえて”日本人の価値観”を意識する必要はない。問いかけは、自ずとその価値観を前提としたものになる。自身の価値観を”意識化”することは、他者の価値観との比較をしてしまった結果なのだ。