2010年 12月 29日
全国に自分の家族がいるという社会 〜コレクティブハウス〜
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先日、日暮里にある「コレクティブハウス・かんかん森(以下かんかん森)」に訪問した。「コレクティブハウス(コレクティブハウジング)」とは、共同で使うスペースを持ち、食事・設備の管理など生活に関わる運営を皆で共有する居住形態だ。スウェーデンが発祥だといわれている。(デンマークという説もあるが)
「かんかん森」には共有スペースとして「ダイニングルーム」「キッチン」「キッズスペース」「ゲストスペース(訪問者宿泊用)」「工作テラス」「コモンテラス」「コモンランドリールーム」などがある。またグループ活動として、キッチン設備・備品の管理、食材の管理を行う「コモンミールプランニンググループ」、コモンテラスの植栽・緑化、コンポストの管理を行う「ガーデングループ」、リサイクル活動・フリーマーケット企画・開催を行う「エコ・省エネグループ」「備品グループ」「掃除グループ」「インテリアグループ」など計14のマネジメントグループがあり、住人はいずれかに所属することになる。さしずめ地域のボランティア活動がマンションにセットになっているといったところだろうか。
「コモンミール」と呼ばれる夕食会が週3回行われる。食事代は400〜500円で、また月1回の料理当番が廻ってくる。夕食の様子はまさしく大家族。子供が遊ぶ声、ビールを片手に語り合うお父さん、母親同士はやはり子育ての話題など、そこには世代を超えた交流がある。このコミュニティでは高齢者の方が元気なのだというが、マネジメントグループにおける役割・世代を超えた交流などが覇気と生活に潤いを齎しているのかもしれない。また子供にとっても社会性が育まれる効果、そして地方から出てきた一人暮らしの方にとっては、顔見知りに囲まれているという安心感があるという。(参照:かんかん森 居住者の声)
月1回の定例会があり運営に関する議論と決定を行う。決して多数決で決めず、皆が納得するまで議論を重ねるという。先に述べた「ゲストルーム」は規模・運営方法などの最終決定まで3年間ほどの期間を要したという。こうした運営方針は北欧の事例から学んでいる。
12階立ての複合施設マンションの3フロア部分(28戸)が「かんかん森」に割り振られ、現在30名程度の住人が暮らしている(若干の空室がある)入居費は56平米(2LDK+バルコニー)で143,000円。共有スペース分も入っての料金だから、まあまあ納得できるレベルではないか。最も安いのは単身向け約5畳の部屋(シェアルーム)で45,000円だという。
今年で7年目を迎えるようだが、当初のメンバーは3名しか残っていないという。理由は転勤、結婚などさまざまで、大きな傾向はみられないということだったが、そもそも”居を構える”とは、値段、土地柄、間取り、ファサード、通勤・通学の利便性、親族との距離など様々な要素を満たした上で決定されるものだ。こうした共同生活を希望したとしても条件が合うものはなかなか見つからないだろう。
現在、コレクティブハウスは都内に4軒、都外に1軒あり、今後も継続して、様々なニーズにあわせたコレクティブハウスを全国に広めていきたいという。「単身赴任などで全国を行き来する人にも、転勤先にコレクティブハウスというファミリーがあれば、どこにいっても家族に加わることが出来る」とのこと。確かに、そういうカタチも悪くない。日本だけに留まらず世界にあれば、世界中を旅するのも楽しそうだ。
因に小生が留学したデンマークでは”親の面倒をみる”という常識がない。そこには互いのライフスタイルを尊重する個人主義が根底にある。そもそもは女性の社会進出など、従来の家族形態の崩壊故にこうした常識が育まれた。それに呼応するように社会保障の充実が図られた。私たち日本は”親孝行”という徳の価値観の中にいるが、孤独死、限界集落など地縁、血縁の崩壊は誰の目にも明らかだ。日本でもコレクティブハウスに限らず、特養に幼稚園をセットするなど様々な相互扶助の取り組みが行われている。これからの”居を構える”というのは、物理的な要素に加え、どのようなコミュニティに参加するのか、というのが一つの要素になっていくだろう。
by isoamu
| 2010-12-29 21:13
| サスティナビリティ