2010年 12月 15日
究極のエコビレッジ
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68名(2010年9月現在)が共同生活をする「木の花ファミリー」(静岡県富士宮市)は、有機農業を営み、約16ヘクタールの田畑に110品目、250品種を越える作物を育てている。食事は一部を除いて全て自給自足だ。決して高価ではないが豊かな食事である。味がしっかりして、とても美味しい。子供が13人(0歳〜中学3年)、最高齢は70歳を越える。年間2300人の訪問者があるという。
サスティナブルライフを営んでいるわけだが、そのコアとなる精神性(ワンネス)を生活の中心に据えている点が他のエコビレッジと一線を画す。人間も自然界の一要素という意識があってこそ、自然に対する畏敬を生み出し、ひいてはそれが本質的なサスティナブルライフに繋がるのだろう。
食事の前には必ずお祈りをする。子供たちが「お祈りします。いただきます、します」とかけ声をかけた後に一斉に食事がスタートする。また食事後のミーティング時には、全員に輪になって、地球と人間とが一体となる瞑想を行う。農業、食事などの運営面の打合せのほか、自己を曝け出すような対話の時間もある。ゲストが来た時には住民によるミニコンサートが開かれるが、その歌詞は精神性(ワンネス)への想いが綴られたものだ。収入の全てを共有し、1年間の1人当たりの収入は70万程度なのだという。ファミリー内の施設も、互いに出資し合って共有している。子供たちによる「子供ミーティング」も大変ユニークな取り組みだ。60名弱の大人の前で、議事進行する経験は大人になっていくにつれてより貴重な経験であったことに気づくだろう。こうした自然との共鳴、住民同士の一体感の醸成は、サスティナブルなコミュニティを持続維持する上で合理的な方法だろう。
まるで多世代が暮らす大きな家族のようであるが、確かにこれからのコミュニティが理想とする一つのカタチではある。超高齢化社会における介護・孤独死などは地縁・血縁の崩壊がその根底にある。ここでは地縁・血縁を越えた新たな相互扶助のあり方を模索している。そして環境問題は、言うに及ばず自然に対する畏敬の念の喪失にある。ここではその精神性に着目し、人間の内なる動機からサスティナブルライフを構築しようとしている。現代社会の対極を地でいくファミリーなのだ。
こうしたコミュニティが存在することに、ただ驚くばかりだが、ここの共同生活の密度に現代人のほとんどは窮屈さを感じるかもしれない。ここは極めて本質的なのだ。
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by isoamu
| 2010-12-15 00:00
| サスティナビリティ