2010年 09月 29日
使ってみたくなる設え 〜HISmesse〜
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先日「HITmesse」というICTを使った認知補助用具の展示会を視察した。コペンハーゲンから電車で1時間半ほどにあるNyborg駅の近隣ホテルでの開催だったが、規模としては会期2日間で1,345人の来場者、46社の展示数であった。外観デザインの観点で印象に残ったものを紹介する。
これは最大A4までのテキストを音声読み上げしてくれるという「ClearReader+」だ。デモではほぼうまく動作していた。外観デザインも端正で好ましいものに仕上がっている。このメーカー(ITECH)は他にもOCR(光学文字認識)を活用し点字データに変換する「OPUS Braille」など、幅広い展開を見せていた。
ドイツのメーカー「Eschenbach」による拡大鏡だ。もともとはレンズ製造販売を主たるビジネスとしているが、ドイツらしい精緻な印象に仕上げられている。このレンズ剥き出しの外観デザインは、福祉用具よりむしろプロフェッショナル用途に近いが、使用者を精悍に見せる( ̄∀ ̄*)好ましいものだ。
「電子拡大鏡」は多くのメーカーから様々なバリエーションが展示されていた。日本で同種の製品を数多く見てきたつもりだが、こちらの方がデザインの質感が好ましい。そして機器も非常にハンディになってきた。これなら使ってもいいと思わせるものだ。
これは教室内での使用を想定した「電子拡大鏡」だ。こちらもB&Oばりのアルミを多用した高級感ある仕上げ。
高齢者層を想定した携帯電話(シンプル操作&少機能)にも工夫が見られる。アルミ外装で高級感を演出するもの(上写真左)、音楽を楽しめるスピーカー付の付属品があるもの(上写真中及び下)、防水仕様でアウトドアでの使用を想定し首ベルトが装備されたもの(上写真右)などがあった。皮ケースにもスワロフスキーばりにプラスチックがちりばめられたファッショナブルなものもったが、説明員に「なぜか?」と聞くと「高齢者は高齢者っぽいものを使いたくない」とのこと。万国どこでも同じですね。
「点字ライター」もシルバーを基調とした実利的なデザイン。こうした素っ気ない雰囲気の方が、やはり好ましい。と、かなり私の興味範囲で恣意的にまとめたが、いずれにせよ日本の福祉用具にある押しつけがましい”やさしさ”がなくていい。”使わざるをえない”から”使ってみたくなる”というしつらえに、是非していきたいと思う。(関連エントリー:スティグマデザイン)
展示会の最終日には、最も優れた製品を表彰するアウォードが開かれた。最優秀賞はアンドロイドOS上で動くOCR音声読み上げを搭載した「SkanRead Mobile」だ。受賞理由は、汎用OSと汎用の携帯モジュールにより、低コスト且つコンパクト化を実現したことのようだ。こうした汎用技術を活用するメリットは大きい。
先のエントリー「視覚障がい者はiPadを使えるか」でも述べたが、そもそも福祉用途でなく、商品特性がイノベーティブであるがゆえに多様なユーザーを包括する事例は多い。携帯電話のメールも、多くの聴覚障がい者にとって必須のコミュニケーションツールになっている。現有技術を丁寧に拾い上げるのにも大きな可能性があるように思う。
by isoamu
| 2010-09-29 04:10
| デンマーク