2010年 09月 03日
個で語り合うこと
|
私が受講している「Crossing Borders(以下CB)」は「Global Citizen」たるべく、世界事象を学び、生徒間の対話で理解を深め、具体的にアクションするまでの一連のプロセスにおける能力向上を目指す。「Global Citizen」には様々な表現があるが、そのKey Factorは「世界事象を現実の生活と相互干渉させられること」と私は捉えている。
さて、一回目は、このコースにおける各自の「Dream(思い)」「 Expectation(期待)」「 Fear(不安)」「 Strategy(戦略)」を個々に考えさせプレゼンを行った。全員のプレゼンを録画し、その場で再生共有し、伝わり方について皆で意見交換を行う。各自の目標設定とプレゼン演習がコンパクトにパッケージングされたエクササイズだ。二回目の授業では国連が進める「MDGs(Millennium Developing Goals)」(以下動画2点)を共有し、そこで挙げられている課題(貧困飢え、教育、男女平等、子供と妊婦の健康、HIVとAIDS、地球環境、世界協調)の理解をグループ間で深め、課題に優先順位をつけさせる。ここでは全ての課題が相関していることを気づかせる。三回目には民主主義に関するエクササイズ。デンマークの民主主義社会構築における大きな潮流であったホイスコーレンの歴史を俯瞰した後で「Democracy Tree」をグループで作らせる。「Democracy Tree」は民主主義の根本要素(憲法、三権分立等々)と、それを実践する上での障害(非アクティブ市民、メディアによる情報誘導等々)、その障害を乗り越えた時に得られる果実(平等、自由等)を洗い出し整理するものだ。
CBに加え「International Current Affairs(以下ICA)」も受講している。CBは「Global Issue」を全体俯瞰し民主主義の原理原則に着目するが、ICAは最近の国際紛争、社会問題から世界動向を紐解く。一〜二回目はハイチとアフガニスタンを現地取材したジャーナリストを招え、現場の写真を共有した上で現状把握を行った。その後、幾つかの関連記事を各グループで議論させ、様々な視点を組み込みながら理解を深める。三回目はエチオピアにおける寄付と利権の関係について対話した。「Aid Addiction(援助中毒)」が問題視されているが、貧困から抜け出せない利権構造と不毛な土地が負の連鎖を助長する。BOTのマイクロファイナンスなど貧困層を対象としたビジネス構築は一つのアプローチだが、いずれにせよ問題が重層化かつ不透明で紐解くにはかなりの労力と時間が必要だろう。
ICAを受講している学生の国籍は、北米、日本、エチオピア、モルディブ、ハンガリー、ウガンダ、イスラエル、ガーナ、セネガル、ネパール、デンマークの11カ国。こうした「Global Issue」に関する対話において、国民性の違いを感じることはほとんどない。誰にとっても貧困、差別、災害は悲しいことだ。ただ夫々の問題に対する深浅は異なる。アフガニスタンにおける”女性”議員候補のボランディアが殺害された事件について沈痛な思いは共有するものの、女性迫害の長い歴史を背負う国の学生には、日本人の私が感じるものより深いものがある。
こうして個々で語り合えば、深浅は異なるものの問題意識は決してブレない。それなのに紛争は終わることなくいまだ世界のどこかで起こっている。そもそも国という単位は富を守ることを起源にしているときく。利権を背負った組織の人間ではなく、一人の人間同士として対話すれば、共感と解決の糸口がみつかるのではないか。CB発起人のガルバ(アフリカ出身)は、こうした思いで世界に活動を広げようとしている。
彼の近々の構想は、イスラエルとパレスチナの若者を日本に招聘することだそうだ。「電車の中で、ぐがーって寝ているビジネスマンを見せたい。世界にはこんなに平和なところがあるんだってね」
by isoamu
| 2010-09-03 02:55
| 他