生産者と消費者
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一心不乱に飼料を食べる牛たち。ゆったりとこちらを眺めては、また食べ続ける。そして恍惚とした表情で搾乳される牛たち。スポンッと乳から搾乳機が外れても意に介さず、お尻を叩かれてようやくのそ〜っと動き出す。いずれ彼らは食卓に並ぶのである。それが頭の中でグルグルしては、小一時間私をそこに立ち止まらせてしまうのだ。
スヴァンホルムでは約百頭の牛を飼い、月に2頭をコミュニティの食用にする。彼らは生産者でありながら消費者でもあるわけだ。しかし通常僕らの生活は、消費者の感覚でしかない。仮に生産者の立場にありながらも、その生産規模によっては次行程への品質保証に意識が埋もれ、生産者たる意識は持ち得ない。消費と生産の関係は実在であるのに、実感は難しい。
サスティナビリティは、従来の通念を分解し、その相互関係(生産者と消費者 等)を問い直し、再構築することだ。ただ、そうさせないのは埋もれた意識の中で必然を感じないからだ。
食物アレルギー、ベジタリアンなど食物摂取を厳密に選別せねばならぬ人が、このコミュニティに惹かれてやってくる。彼らには問い直す必然がある。そして生産者と消費者が同居するこの手触り感のある環境は、きっと安心感に繋がっている。更に新鮮な食物の美味しさがそれを後押しする。サスティナビリティへの志向は、身近な消費から捉え直すことから始まる。