2010年 07月 25日
引け目を感じないアクセシビリティ 〜コペンの動物園〜
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コペンハーゲン郊外にある動物園である。エントランスも子供っぽさを感じさせないオーセンティックなファサードで好ましいのだが、ここにあるエレファントハウスの設計はノーマンフォスターが手掛けている。象の生態系への配慮が主たる設計ポイントでフォスターらしい派手派手しさはないが、端正にまとめられている印象を受ける。RCAのロジャーコールマンはアクセシビリティの典型事例として紹介しているが、本稿もその観点に絞って述べてみたい。
入口から続く緩やかなスロープの先には、象を上から眺められる高台がある。象と館内とを分ける仕切りは、大きな切り株のような形状で周辺環境との違和感を最小限に抑えている。それから逆方向にスロープを下るのだが、そのスロープに沿って展示ボックスが並ぶ。
インド神話、ヒンドュー教、仏教と象との神話、象牙にまつわる禁猟問題、アジアの日常生活における象との関わりなど、人と象にまつわるトピックを実物を交えながら紹介している。興味に引かれて次々と展示ボックスを眺めていくと、無意識下にスロープをゆっくり降りていくことになる。気づくと地上階に辿り着き、今度は屋内で直接象を眺めることができる。
その後、展示内容は象の実物大模型、象の体重を自分の体重と比較できるものなど、リアルスケールを感じられるものに変わる。後は屋外の象を眺めながめていくと出口まで辿り着く。
スロープはアクセシブルではあるが、長く、つならなくものになりがちだ。これはスロープスペースを象観察への導入として、関連展示とうまく組み合わせている。結果スロープであったことさえ、忘れさせてくれる点がいい。そもそも小さな子供を連れた夫婦は、乳母車をおしている。また動物園ではリヤカーを貸し出している。こういうユーザーにおいて、スロープ設計は必然ではあるが、その引け目を感じさせない構成が素晴らしい。
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・Foster & Partners Elephant House
by isoamu
| 2010-07-25 21:28
| ユニバーサルデザイン