2010年 07月 16日
生物多様性とデザイン
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The Organic Research Centre "ELM FARM"に訪問した。
ここでは生物多様性による収穫高向上及び持続維持可能な農業の研究をしている。例えば、二種類の作物をそれぞれ別の耕地に作付けしていたとする。作業面からすればこちらの方が効率性はよい。いわゆるモノカルチャー(単作)というものである。これとは別に二種類以上の作物を同じ耕地に混ぜて作付けするポリカルチャー(混合作)というものがある。二毛作は同じ耕地に時期をずらして作付けするが、これはほぼ同じ時期に作付けする。
これによって先に収穫の終わった作物の葉は土に戻り、次に育つ作物の栄養となりうるなどの好影響が生まれる。クローバーなど種によっては化学肥料を施さなくとも育つ土にすることが出来るものもある。作物種との組み合わせだけでなく、鶏など動物との組み合わせもありうる。鶏は除草や耕起をし、また残飯や野菜を食し土を豊かにする鶏糞を提供してくれる。こうした生物間での好影響、好循環を極限化し、モノカルチャーよりも高い収穫高を狙う。化学肥料は土地を荒廃させることもあるようだが、こうした生物多様性による自然治癒は、その土地の持続維持にも繋がる。その土地との相性もあるそうで、イギリス以外の数カ国に実験農場を持ち研究を続けている。
さて、効率性を指向するならば、同種の作物だけの方が当然良かろうと思う。しかし生物の組み合わせによっては、それよりも高い収穫を得られるという逆説的な思考が、私にとっては新鮮であった。生物多様性というと”持続維持すべきもの”との認識はあったが、これを積極的に活用し、ポジティブストロークを働かせるというところが良い。
この生物多様性のコンセプト、デザインにも様々なインスピレーションを与えてくれると思うのである。
ちょっと発想を飛ばしてみる。例えば、道端にゴミを捨てることはいけないことだけれども、捨てないようにするのではなく、捨てることで周囲に好影響を与えるような仕組みができないものか。人間が移動することによるCO2排出は避けて通れないものけれども、移動しないのではなく、移動することによってCO2排出に代わる好影響を生み出せないか。卑近な例だが、以前新宿で実験された”足踏みで発電する”というのは、本来ならば避けたいラッシュを逆説的にポジティブに変えてしまったと思うのである。
まあ何はともあれ、この実験農場の付近にあったカフェは気持ちがいいのである。
by isoamu
| 2010-07-16 05:25
| サスティナビリティ