2010年 07月 08日
視覚障がい者はiPadを使えるか?
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イギリスの視覚障がい者を支援する「Royal National Institute of Blind People (RNIB)」が発行する機関紙に、盲人と弱視者によるiPad操作レビューが掲載されている。要約を紹介します。
「iPadは、音声読み上げ機能、画面拡大機能、画面コントラスト調整機能が予め搭載されている。しかしアクセシビリティは十分なのか? テクノロジーにも精通する盲人と弱視者の2名が評価にあたる。
本体は薄く軽い。長時間のホールドは快適ではないかもしれない。弱視者にとって画面は明るく精彩で見やすい。但し、iPadに限定した課題ではないが、操作角度によっては光が反射して見にくいことがある。もっともノングレアシートなどで対応は十分可能だ。
iPadは200倍まで拡大できる機能を有するが、拡大時でもテキストは鮮明で読みやすい。更に印象的なのは幾つかのアプリケーションで使える”つまむ”画面拡縮機能だ。弱視の評価者はこの機能を非常に気に入った。但し、カレンダーとノートアプリにおいて使えない場面があったのは残念だ。
iPadの「音声読み上げ機能」は通常のPCのものとは異なる。画面上のボタンに触れると読み上げが開始される。例えば「Mailボタン」に触れると「Mail. Seven new items. Double-tap to open」と読み上げられる。それからダブルタップでその機能を起動できる。(そもそもどうやって盲人がボタンの位置認識をするかだが、そこに関する指摘はない。おそらく外形からの距離感で類推するのだと思う)読み上げの音声は鮮明で問題ないが、声の種類が選べればなお良い。但しノートとカレンダー機能においては、VoiceOverがうまく機能しない場合があった。
iPadは「音声読み上げ機能」動作中も手と指のジェスチャーで操作することが出来る。このジェスチャー操作は覚える必要はあるが、多少のミスは許容できるよう設計されている。タッチキーボードは指を離したときに入力されるが、発音のいい音声読み上げと伴って、非常に早く、正確に楽しくキーインすることが出来る。
最後に、弱視をもつ評価者は、ウェブブラウジングをする上では、おそらく最も優れたデバイスであるとする。そして盲人の評価者はこの「音声読み上げ機能」は高いレベルに仕上げているとしている。いずれにせよiPadは現状で最もアクセシビリティの高いタブレットデバイスである。他のメーカーの追随が今後想定される。」
そもそも盲人にタッチパネルの使用は困難かと思っていたが、概ねポジティブな反応だ。ところでiPadは電子書籍における一つの有力なデバイスとされる。盲人、弱視者双方にとって、iPadが許容できるものであれば、電子書籍の普及によってコントラスト調整、文字拡大、音声化、点字化という煩雑さから彼らは完全に開放されるかもしれない。これこそイノベーションと呼びたい。
by isoamu
| 2010-07-08 06:46
| ユニバーサルデザイン