2010年 06月 12日
倫理決算 〜繰り返される理念の確認〜
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そろそろ本学期(6月末)も終わる。先日、学校の基本理念「連帯」「自己決定」「尊厳」がどれほど生徒に浸透しているかの「倫理決算(5段階アンケート評価他)」が行われた。法律で義務づけられているようだが、名称がユニーク。私の回答(良5-悪1)と感想も含めて紹介する。各設問は学生によって用意されたものだ。多少違和感を否めないが、そもそも様々な捉え方があり得るものだろう。
基本理念の具現化に向けた学校の体制、環境作りに対して
「連帯」
(1)互いに助け合える環境であったか 5
(2)互いの意見を尊重し合える環境であったか 5
(3)学校にロイヤリティを感じるものであったか 5
(1)障害有る無しに限らず極めて自然に助け合える環境であったように思う。特に障がい者に対してはパーソナルアシスタント制度による恩恵が大きいが(参考:パーソナルアシスタント制度、つくづく不思議な環境)サポートするのが当たり前の行為として醸成されていたように思う。(2)多くの対話する機会があったが、互いの意見を否定することなく、公平に意見をいえる環境作りがされていたように思う。多人数の中でも臆することなく、常に手を挙げ発言する学生がいた。そもそも彼らはそうした素養を持ち合わせていたようにも思う。拙速に結論を求めることなく、まずは互いに「言いたいことを言う」というのが優先されていた。(参考:対話対話)(3)ここまで多様性があり、国内でも貴重な存在であることは理解できる。教官、学生ともに本校を気に入っている様子が言葉の端々に感じられた。
「自己決定権」
(1)教員は常に生徒の意見を認めていたか 5
(2)互いに理解しながら、連携しながら、自己決定が尊重、維持されたか 4
(3)全ての意志は同等の価値があると認められていたか 4
(1)教員はアドバイスはするが強制することは決してなかった。これは日々の生活の中でも徹底されていたのを感じる。(2)連帯と設問が重複しているが、自己決定するためには他己決定も尊重されなければならない。自己決定は利己主義とは異なる。周りの決定を尊重してこそ自己の決定が確保されるものだ。ただ”互いに理解”というよりは”互いに干渉しない”といった印象も拭えなかった。という意味で4(3)(2)と同様
「尊厳」
(1)プライバシーは守られていたか 5
(2)個人ごとに、最適で、それぞれに異なる対応がされていたか 4
(3)全員が包括されていたか(除外されていなかったか) 3
(1)当然守られていたと思う。(2)言語の問題から授業選択が限定的だった。特に対話をしながら進められる授業は歓迎されない面もあった。ただ頭ごなしに拒否するのではなく参加機会は十分に与えられたことは評価したい。それぞれをインクルードするためにはそれ相当の体制も必要だろう。当然、本人の能力によって致し方ない面もある。これこそ個人ごとに対応すべき事由だろう。(3)上記と似ているが、通訳が質、量ともに不足していた。全ての場面でInternational Studentが包括されていたとはいえない。
上記が学校に対する評価だが、生徒間を対象とした質問もあった。「たとえ間違ったことをしたとしても、その人自身を見るようにしていたか(罪を憎んで人を憎まず?)」「他人の見解を尊重していたか」「必要な時に援助が受けられていたか」「安心感を感じられる環境だったか」等々
アンケートだけに留まらず、もう少し多面的に評価するフレームも欲しいところだが、「自己決定権」など本校に限らず他教育機関、高齢者及び障害者施設でも尊重されているのを感じる。これほどまでに徹底して理念が繰り返されるとは、少なくとも日本人の僕の経験からすると極めて新鮮だ。
さて我々日本人の理念は何なのか? 高度経済成長期は終わり、多様な価値観が芽生え、先の見えない不透明な時代だからこそ、何か依るところが欲しいと思う。今まで置き忘れたものを再認識し、自分たちの理念を定義する時期ではないか。
by isoamu
| 2010-06-12 04:54
| デンマーク