2010年 06月 11日
懐かしさが人を癒す(デンマークの高齢者デイケアセンター)
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オーデンセ市にある高齢者デイケアセンター(施設名:Korup day center)に訪問した。外観は言わずもがなの典型パターン(茶系煉瓦、三角屋根)で、住宅と施設との違いも曖昧だ。日常生活の延長であることへの配慮なのかもしれない。入り口には利用者の歩行補助具がずらりと並ぶ。こちらでは本当によく見かけるが、もう少し外観に気を配ったものが出てきてもいい。その殆どがコムーネからの支給であるゆえ、そうしたニーズが顕在化しないのが一因かもしれない。(参照:福祉用具か補助用具か、福祉用具の定義)


まずは地下のアクティビティ室へ。数人が集まって、ボランティアとともに食器の絵付けを行っていた。こうした光景は、ホイスコーレン含め多くの施設で見かける。そもそもDo It Yourselfが盛んな国民性も影響しているのではないか。


オールディーズラウンジ(oldes hyggestue)と名付けられた部屋には、利用者にとって懐かしいものが並べられている。国民学校のときに誰もが使っていた鞄(日本でいうランドセルのようなもの)、ラジオ、テレビ、本など。こうしたものに囲まれてのティーブレイクは話が弾むのだという。また認知症の方にとっても、気持ちを落ち着かせるために有効だとも言われている。これは日本の認知症施設でも行われていることだが、私の実習先であった認知症グループホームは、昭和の歌謡曲をエンドレスで流していた。
しかし、これもう少し拡大解釈してあげれば、いろいろ可能性も広がるように思う。日本にはノスタルジックなコンテンツを呼び物にするアトラクションが多い。子供から大人まで楽しめるものだと思うが、高齢者施設用というだけでなく地域の中で活用してもらえるものにしてはどうだろうか。幅広い世代が集まり、結果このデイケアセンターも活気が出てくるはずだ。孫を引っ張りだすいいきっかけにもなる。特定の利用者だけに閉じた施設は、あまり健康的ではない。


利用者の手作り品が販売されているダイニングは、これまた典型的なインテリア。このまま”ホイスコーレンです”といっても分からないくらい(特徴がないともいえる)ただナチュラルで好ましい。私の実習先だった日本の高齢者デイケアセンターは幼稚園もどきの色紙の飾り付けがされて、いたたまれなさを感じたものだ。子供扱いは利用者の尊厳にも関わる。あくまで受け手の気持ちになった環境作りをしてほしい。
スタッフ用の机には昇降機能がついている。同じ姿勢で勤務すると腰痛等をまねくとして労働環境法で規制されているのだそうだ。同じく可動型のリフトも、これを使わないと労災がおりない。同行した日本人の社会福祉士は「知ってはいたけど、面倒だから使わないよね」と一言。確かに使うには時間がかかる。法的規制が無ければなかなか手のでない商品なのかもしれない。日本の福祉用具の市場が育たない背景の一因でもある。
by isoamu
| 2010-06-11 23:26
| デンマーク