障がい者デイケアセンター
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デンマークのオーフス市郊外にある障がい者デイケアセンター(施設名:handi-ka)を訪問した。ベージュの煉瓦はこちらの典型的なファサード。電動車イスユーザーへの対応だろう通路には大振りの傷防止用ガードが取り付けられる。エレベーターには赤外線センサーが取り付けられ、車椅子ユーザーがボタンを押すことなく使用できる。カフェはいつでも利用できるようスタンバイされている。室内色(白ベースに彩度の高い色を躊躇なく使う)もこちらの典型。利用者は30人程度。運営はスタッフ5〜6名、ヘルパー5〜6名、キッチン3人の計13〜15人が従事している(パートタイム及びテンポラリーも含む)

「一人一人何をしたいのかを考え、自立に向けたサポート、それぞれの意見を尊重する」をここのポリシーとする。よってスタッフ側から利用者に対して活動の強要はしない。ここでどう過ごすかは本人の意志次第だ。ここには以下のラインが用意され、利用者は自由に選択することができる。但し、ラインの替わりにアクティビティ(周辺散歩、旅行計画、パーティー、ミニコンサート等々)が頻繁に行われ、またライン間の移動は自由であることなど柔軟性を持った運営がなされている。定期的に海外旅行にも出かけるそうだが、自分たちでプランニングから行うという。旅行の計画は様々な要素(訪問先調査、費用計算、アクセシビリティ調査、行程計画)を複合的にまとめていくものだ。楽しく、且つトレーニングとしても効果的なのだろう。施設アクセシビリティのアセスメントはこの利用者の特性を活かしたユニーク且つ地域にとっても有益な活動だ。
NAVIGATOR(時事を話し合い他国と交流する)
FORSPRING(自立支援)
KREATIV(音楽、絵画、読書など各種アクティビティを行う)
KOMMUNIKATIONS(コミュニケーション能力の向上を図る)
HANDI-TRIVSEL(エクササイズによる文化学習)
HANDI-@DGANG(施設アクセシビリティのアセスメント)


音楽室には一通りの楽器が揃っている。美術室も絵を描くだけでなく機織り機、ガラス細工が出来るなど手のこんだ制作も出来る。ジムには各種トレーニング機材が揃う。パソコンを使い、イベントのパンフレット、新聞などを自分たちで作ることができる。規模こそ小さいものの、私が通うホイスコーレンと同種の施設機能を持つ。スタッフは本施設を「デイ・ホイスコーレン」と呼ぶ。通常のホイスコーレンは”寄宿制”だが、こちらは”通所制”ということでそう呼ぶのだというが、そもそもエグモントホイスコレーンのコンセプトをデイケアセンターに展開したのだそうだ。
日本のデイケアセンターと比較すると、ライン、施設機能共にその選択肢の多さが印象的だ。そもそも、利用者の意志/選択を尊重するためには、運営側がそれを受け入れる”選択肢”を用意しておく必要がある。そしてそれを可能とする人的サポートも必要だ。ポリシーは、こうしたところにも展開されている。
ここは一定の障害者認定を受けられれば、いつまでも利用することができる(滞在期間の制限がない)利用料は障害者年金などで賄うことができ、実質利用者の負担はない。エグモントホイスコーレンを卒業した学生が利用するケースも多いという(ホイスコーレンには滞在制限がある)この形式のデイケアセンターは他にはないようだが、日本の福祉施設でもオーナーの理念によってユニークなものも存在している。まだ手探りであると同時に、多くの可能性が残されているということかもしれない。
それにしても、この国の施設のファサード及び室内インテリアはどこもよく似ている。ブラウン系の煉瓦と三角屋根、白のベーストーンに原色とアルミと木目の組み合わせ。天井のボードなど規制されていると思うほど全く同じ。さほどバリエーションがないというのが印象だ。
そして「意志/選択を尊重する」というポリシー。これは幼稚園、国民学校(小中学校)、ホイスコーレン、高齢者センターに至る全ての施設においても徹底して貫かれている。結果、持続性と協調性に欠けるなどの短所もあるが、適度なバランスを保っているように思う。これは「意志/選択の尊重」と同時に「連帯」も教育の中で展開されているためなのかもしれない。例えば多くのグループワークと対話をさせるのがその一例だろう。
※本稿は、施設アテンドをして頂き、また実際に従事もしていたTさんの記事を参考にさせて頂きました。