日本よ、デンマークを気にするな
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出典元:国民生活選好度調査結果の概要 平成22年4月
内閣府 経済社会システムが発表した幸福度調査には、比較対象としてデンマークがはいっている。2006年にイギリスのLeicester大学が「幸福度ランキング」を発表して以来、日本でも「世界一幸福な国」「幸福度世界一」「世界一幸せ」などのタイトルを冠した書籍が発行されるようになったが、日本において、デンマークは福祉に加えこの幸福度が一般化しつつあるということかもしれない。
ただ、確かに気にはなる。超高齢者化による年金と介護の不安、低迷する経済はリストラを恒常化させ失業率を押し上げる。会社依存の人生設計を信じる人も、もはや少ないだろう。こうした閉塞感の中にあって「幸せな国がある」となれば気になって当然かもしれない。

イギリスのシンクタンク「New Economics Foundation」がまとめた「 the Happy Planet Index」の「一人当たりのGDPと幸福満足度の相関(上図)」は、10,000ドルを境に幸福満足度が大きく変動しないことを表している。この指標だけに限っていえば、幸福満足度というのは、経済状況などの一定の条件を満たせば、あとは自分自身の価値観ということになる。
デンマークは「自己決定」「自己責任」などのキーワードで語られるように、日本と比べ個を尊重するという価値観を持つ。前述のLeicester大学がその典型事例として紹介したのが、ゴミ収集を職業とする男性と巨額の財産を相続しながらも大工として働く若者だ。ゴミ収集の男性は(職業が何であれ)家族との時間、子供たちとの触れ合いが幸せの源だと語る。大工の若者は「いろいろ可能性があるでしょ?」との質問に「大工楽しいから」とサラリと答える。いずれも本人が置かれた環境、または社会通念に依らず、自分自身の意志が明確であることが幸福満足度に影響すると指摘している。

実は前述のthe Happy Planet Index では、デンマークは大きくランキングを落としている(105位)(参照:Costa Rica is world's greenest, happiest country)。第一位はコスタリカのようだが、地球環境も幸福度に影響しうる(ex 高消費社会は寿命が短い)という主旨のもと、その国の環境負荷も指標に入れている点が大きく影響している。この考え方自体もじっくり読み込みたいところだが、ここで言いたいのは、幸福度は図る指標によって容易に変わり得るということ。(上図は各国の環境負荷の指標としてエネルギー消費量を面積で表した図。メタボな日本がとても痛々しい)
日本人の特性の一つに、高い協調性がある。「空気読む/読めない」などの俗語があるように、確かにそれは日本社会においては必要なことでもあろう。更には日本の経営者はそれを団結力と称して社員を鼓舞する。ただ逆にいえば「人がどうするのか?」「人がどうしているのか?」「人がどう生きているのか?」など周りの動向を常に気にする特性だともいえる。しかし、こと幸福満足度に関しては、この協調性、多少、引っ込めてもいいのではないか。前述のように幸福満足度は指標によって変わり得るし、そもそも他人が自分の幸せなど推し量れるものではない。デンマークを気にしていること自体が日本人の特性でもあり、そうしている以上、幸福満足度は上がらないのではないか。
デンマークがどうであろうが関係ない、自分たちの幸せは自分たちで決める。実はそれが幸せになるための第一歩なんじゃないか。そして、それがデンマークから最も学ぶべきことでもあるのだ。