新と旧
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コーリング博物館は700年以上前の古城で200年前に火災あって以来長い間廃墟となっていたが、十数年前に博物館としてコンバージョン(用途転換)され生まれ変わった。通常、こうした歴史的建造物はコンサベーション(保存)を目的として以前のカタチに戻されるところだが、廃墟だった時代も重要な歴史だとして、その痕跡を残す設計がされた。それがかえってこの空間をユニークなものにしている。

火災で爛れた煉瓦は、ホールを厳かな場に仕立てている。シャンデリアの電球には光を反射する金の飾りがつけられ、その質素な構造のわりに光の点を無数に感じさせる。


The Ruin Hall (廃墟のホール)と名付けられた空間には崩れ落ちた壁が、当時の様子そのままに残されている。白い壁と天井は、古城とは全く別の構造体としてグランドフロアから伸びる集成材の大きな柱で支えられる。

こちらも非常にユニーク。場所は失念してしまったが、もともとは発電所だったところを体育館を含む多目的スペースにコンバージョンした事例だ。体育館にはクレーンや発電量を示すメーターが、そしてホールにはジェネレーターの痕跡がそのまま残されている。これらが微笑ましくも重量感ある空間に仕立てている。

古い倉庫をホテルにコンバージョンした事例。太い柱の傷がアンティークな雰囲気を醸し出し、リッチな空間に仕上がっている。欧州の建築は、煉瓦、石という耐食性の高い素材と地震が少ないことなどから数百年の耐久性があるという。同時に政府の歴史遺産保護、景観保護の条例、国民の高い意識もそれを後押し、多くの古い町並みが残る。北欧の建築系大学にはリノベーション専門課程があるそうだ。

ただ遺産の保護と相反して、新しい建築は非常にアグレッシブだ。コペン旧市街を離れた海沿いにあるブラックダイヤモンドと呼ばれる公立図書館は、「煉瓦作りの旧館」に「黒光りの固まりの新館」を無造作にくっつける。こうした「煉瓦のような荒い素材」と「ガラスのような光沢感ある素材」のコントラストは至るところで見られ、もはや定番化している。3XN、BIGなどのデンマークを代表する建築ファームの作品はどれも個性的だ。ヨーロッパは保守的?ってどこかで聞いたことがあるが、そんなことはない、非常にクリエイティブ。
BIGは、伝統を守ることも大切だが、その時代にあったクリエイティブが必要だという。人、環境は常に変化する。当然その時代にあったモノ、建物はあり得るはずだ。持続維持することとクリエイティブは、一次元でバランスをとるものではない。