2009年 12月 05日
イノベーションの安売り
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出典元:DESIGN INNOVATION FORUM 2009
聴講してきましたが、ちょーっとイノベーションの安売り状態。アイデア大会の結果報告といった様相(T社は単なる企業紹介に終始して残念)で、工学におけるデザイン思考の意義/課題などもっと切り込んだ視点が欲しかった。五感に基づく切り口も曖昧で主催者側も消化しきれていないように感じる。またフォーラムの運営自体も、一方的な情報提供だけでなく、インタラクティブな対話を組み込むなど工夫をしてみてはどうか。一時のユニバーサルデザインブームにも似て、イノベーションの定義をも曖昧にさせてしまう危惧も感じた。
ただ工学に限らず様々な分野でデザイン思考(論理思考に対峙するものとして)が有効であることに疑いはない。実際、IDEOによるデザイン思考を体系化したメソッドは、プロダクトデザインから経営戦略、そしてビジネスからアカデミー、更には新興国にまで立体的な広がりをみせている。日本でも博報堂がビジネスエスノグラフィーと称してコンサルティングを始め、東大でもi-schoolでWSを重ねている。
アイデア導出のダイナミックさは、比較的短期間に体現することが出来るが(当然、参加者の能力差もありトレーニングによるボトムアップの余地はある)、企業活動において最終アウトプット(サービスイン、製品化)に結びつけるには(結びつけてこそイノベーション)、優良なアイデアに加え、強力なドライビングフォースが必要だ。
サービスイン、製品化に繋げるためには、数多くの障害、負の圧力を乗り越えなければならないが、ドライビングフォースにはマーケットとの連動など定量的なものに加え、周りを説得し、巻き込んでいく属人的な力が要素として挙げられるように思う。ある専門家は”変人になれ”という半ば冗談とも思える発言をするが、変人を”独自の揺るがない価値観を有するもの”と定義するならば、それも1つの必要条件であるのかもしれない。
先天的なものもあるが、後天的には、理念、ビジョン、フィロソフィーなどを自分自身で組み立てられたならば、一定の”変人化”も達成されるように思う。理念によって価値観は形成され、それが周囲の雑音にもブレない強さに繋がる。そのアイデアが社会的にどれほど意義があるかも雄弁に語れるだろう。
アイデアの導出に加え、それをどうやって世に出すか? そこまで語れてようやくイノベーションであったんだと言えるように思う。
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by isoamu
| 2009-12-05 19:18
| ソリューション