予防観点での高齢者住宅改修
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先日の産経には、子供が介護を担う「在宅介護」は就労人工低減に繋がるとし「施設介護」を主張する記事が掲載されていた。実際、家族介護で離職する割合は「47%」にものぼるという。家族による介護が限界なのは自明の理だが、そうだといって施設に、というのもいかがなものか。あるべき姿は「家族介護を前提としない在宅介護」ではないか。
デンマークでの家族介護で離職する割合は「0%」だという。希望者は比較的若い(55歳~)内から24時間ケアが確保されている住宅に移住する。要介護になっても既にそのコミュニティにはケアが整備されているため、家族介護に依存せずとも住み続けられる。日本と比べると社会保障費の違いによるところが大きいが、そもそも介護は家族ではなく社会全体で支えるというコンセンサスがあるように思う。
団塊世代が75歳以上(後期高齢者)になる2025年には、また大きく介護の問題がクローズアップされるだろう。特に、8割が住宅をもつといわれる団塊の世代に対しては、住環境の改善が大きなマーケットになると考えられる。回復力が鈍化する高齢者は住環境での転倒、つまずきが寝たきりの原因になるといわれているが、そうならないためには”予防”の観点での住宅改修が必要だ。フラット化するなどリスク軽減に加え、適度に身体負荷を与え、残存能力を維持するデザインと設計も必要だろう。
政府も2006年より改正した介護保険制度において、従来の身体介護を中心とした「事後対応システム」を「予防重視型システム」に転換を目指しているという。社会全体で支える介護は、政策とともに住環境もあわせた社会インフラの整備が急務だ。
※1
環境への適応能力が低い高齢者にとっては、環境移行が生活能力低下や生活自己の誘因となること
※2
「可能な限り自宅で介護を受けたい 44.7%」
出展元:高齢者住宅財団:「介護を受けながら住み続ける住まい」のあり方について(中間報告)2004年