世代を超えた共存
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ある高齢者施設で催されたコンサートに伺った。演奏するバンドの実力もなかなかなもので、大変楽しく過ごさせて頂いた。
この施設は、住宅地にありながら大きな中庭を持つ。季節を感じる木々が植えられ大変美しい。ここが住宅地のど真ん中であることを忘れさせてくれる。庭に沿って部屋が隣接しているが、部屋からみる景色はさぞ優雅なのだろう。
スタッフの方からは「また来てください」と声をかけて頂いた。是非伺いたいと思うが、高齢の方(80〜90歳)が大勢を占めるこの環境に何か違和感を覚えてしまう。そして施設のコンサート中に見かけた子供の姿が、なぜが気持ちを落ち着かせる。高齢者施設ゆえ同じ世代が集まるのは至極当然だが、人が住まう環境として、やはり幅広い世代の人々がいるのが自然のように思う。
特別養護老人ホームに働くスタッフ(因に彼女は目が見えない)は「特養の入居待ちは依然として多い」という。高齢者の絶対数もさることながら、要支援状態の自立可能であっても、家族との別居を望み応募する方がいるそうだ。年老いた親とその子供の同居の難しさは依然として残る。生活のリズムが異なれば、協調しあうのも難しかろう。私も自信がない。
世代を完全に分離せず、適度な接点が持てる共存が必要だ。
デンマークでは、1988年に高齢者施設(日本でいう特別養護老人ホーム)の建設が禁止になったという。高齢者にとって重要なのは、身体的な衰えよりも社会的な役割やつながりを喪失すること。そして施設は閉じこもりを生み、社会との接点を喪失させるというのだ。
代わりに、高齢者”住宅”を供給する。55〜70歳のまだ元気なうちに移住することで、地域とのコミュニティが形成され、24時間介護が必要になったとしても、その頃には助け合える人間関係が醸成されているというのだ。
また、その高齢者住宅の周辺にはデイセンターとコモンスペースが隣接し、ケア機能と交流機能が複合した小さな村を形成する。身体の状態に合わせて、デイセンターをいつでも利用できる。そして、コモンスペースで様々なアクティビティを友人と共にする。デンマークでは、家族の介護で職を辞するということがないのだそうだ。高齢者住宅に住むまだ元気な高齢者がボランティアでケアにあたるのだという。
先日、高齢者施設と保育園/幼稚園を併設する施設の着工が発表された。日本はまだその端緒についたばかりだ。