2009年 08月 06日
箱物行政の限界
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先日、十和田市現代美術館、青森県立美術館(上写真)に訪れた。いずれも地域活性化を目的に観光客の誘致に繋がるものだろう(かくいう私がその典型) 某新聞紙上では観光客誘致による経済効果を以下のデータを元に紹介している。某都市では特に外国人の誘致を積極的に進めているという。
<観光客の平均消費額>
国内日帰り 16,000円/1人
国内宿泊 54,000円/1人
海外宿泊 180,000円/1人
(住民の年間消費 1,210,000円/1人)
出典元:某新聞紙上(失念しました)
さて十和田市現代美術館、青森県立美術館ともに、著名なアーティストと建築家を擁したプロジェクトだ。万人受けするコンテンツが備えられており、観光客誘致にも一定の効果を期待できるように思う。建物と一体化したインスタレーションが多く、その土地でないと見られないものばかりだが、その土地である必然性は乏しいように感じる。建築のキーイメージはその土地の歴史、招聘作家はその土地の出身者から見出しているものの、いずれも東京で見られるのであれば、それで全く構わない類いのコンテンツだからだ。
国の総合保養地域整備法(リゾート法)に基づき地方自治体で展開されたスキーリゾート開発も、スキーブームの終焉とともに固定費が重くのりかかり、財政を圧迫しているという。誘致する手段にも流行廃りがある。もっと”その土地らしさ”の根っこの部分から導出される誘致の施策が必要なのではないか。
「つまるところ、地域づくりとは人づくりである。それには、地域の人々の「愛郷心」を地道に高めていくしかない。「愛郷心」をはぐくむには、子供のころからの故郷の文化や伝統を知る教育、「郷育(きょういく・ごういく)」が何よりも大切である。」
引用元:【平成志事術】マーケティングコンサルタント・西川りゅうじん
私があいさつをかわした青森県の方々は、とても純朴で素敵な方々だった。東北訛りは理解できないことも多かったが、人の温かさがとても印象的で、また訪れてみたくなった。”モノ”は一回見れば満足してしまうが、”ヒト”はまた会いたくなる。ひょっとして、また行きたくなる所とは、人との触れ合いの心地よさが大きなきっかけになるのではないのだろうか。
箱物行政と揶揄される政策は、確かに対処療法として短期間に一定の効果は得られるが、地元の人には何が残るのだろう。結局、箱を作っても、住民が当初の狙いを踏まえて運営してくれない限り的確に持続維持できない。観光客を惹きつける”その土地らしさ”って、つまるところ”人”なんじゃないだろうか。
最近は、どの街に行ってもスタバ、ユニクロ、無印、コンビニが判を押したように存在する。利便性は高いが、そもそも”その土地の守るべきこと”が住民に腑に落ちていないと、安易に利便性に流されるのは当然であるように思う。
by isoamu
| 2009-08-06 00:04
| 建築