生活空間に介護サービス
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施設環境が整えられた有料老人ホームの中には、これなら「お母さんを預けてもいい」と家族も安心するところがあるという。施設中央の庭がとても素敵で、入居する本人も「ここなら」と思えるようだ。日常生活から離れるというのは家族共々相当な決意なはず。こうした環境の整備によって、心理的は障壁は幾分でも低くなる。
そもそもデンマークでは1988年に「プライエム(日本の特別養護老人ホームに相当する)」の建設が自体が禁止になったという。その代替として「高齢者住宅」が供給された。プライベートが確保され、普段通りに生活できる住宅だ。ただその周辺には介護体制が完備されており、いつ24時間介護になっても、そのまま住み続けられるという。居住とケアを固定化(施設化)するのではなく、居住とケアをフレキシブルに組み合わせる。しかしあくまで高齢者の住居を中心に据えて、そこにいかにサービスを提供できるかという思想だ。
施設化は低コストに介護サービスを提供するための必然でもある。今の日本の福祉財源からすれば、現実的な選択肢だろう。北欧はあの高税率だからこそ、と言い放ってしまうのは簡単だが、あるべき姿がどちらかは明白なように思う。そこに到達するステップとして、先に述べた環境の整備は実際的であるのかもしれない。