2009年 05月 25日
要約通訳とコミュニケーションの語源
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会話のスピードは早い。特に会議となると会話が重層化して手話通訳者を悩ませる。ゆっくり話す、発言時の挙手など発言者の配慮が必要だが、会話の内容を完全に通訳できない場合は仕方なく要約する。
『私の手に触れていたMさんが指点字を打った。「M:I君はいつおうちに帰るの? I:うーんとね、二二日に帰ろうと思うんだけどね」 その瞬間、私の内部で何かがスパークした。この短いやりとりの中で、二つの新しいことが起こった。第一に、私に手を触れている人が、自分と別の人との会話を私に伝えたということ。〜中略〜 第二は、自分と相手との発言をはっきり区別し、しかも”直接話法”で伝えたということである。例えば、〜中略〜 それまでは次のように伝えられることがほとんどだった。「I君は二二日におうちに帰るんですって」』
出典元:「盲ろう者とノーマライゼーション」P87 福島 智 著
福島氏は”直接話法”の大切さを唱える。会話は、導かれた結論だけではなく、その過程における発言者の感情の起伏など多重的な情報で構成されている。要約は、それを限定して伝えてしまうことになる。
ビジネスの世界で要約は、必須だ。さまざまな場面で求められる。効率の局限化で利益をあげる企業の宿命からすれば当然のことだ。上司・同僚・顧客に対して、的確に、短時間に内容を伝える必要がある。そして要約が的確にできるかどうかは、物事の本質を捉えられているかどうか、でもある。何を残して、何を省いていいのか、要約のプロセスには、こうした情報の取捨選択が行われている。
しかし、これを家庭に持ち込むと少々まずい。いやかなりまずい。要件だけを要約して伝え合う夫婦の会話がなんと味気ないものか。自分のことは棚に上げて、相手にそうされるとかなり苛立ちを覚えてしまう。たわい無い、そして結論もない会話、でもその行為自体が夫婦間では価値があるように思う。
手話通訳ではないがパソコン通訳はしたことがある。キー入力の早さには自信があるが漢字変換がうまくいかない。(因に字幕制作の現場では、番組内容に応じて適切な漢字が上位候補になるよう事前調整している)そして適切な漢字を選んでいるうちに、会話はどんどん先を行く。結果、エイッと要約してしまうのだが、聴覚障害者からは「誤変換は気にしなくていいから打ったまま進めて欲しい」と諭される。正確に伝えることより、場の雰囲気に沿って柔軟に伝えた方が喜ばれる。
本来、コミュニケーションとは「共同化」すなわち「まじり、共有しあい、共通の物を作り出す」という意味だという。情報のやりとりではなく、これによってもたらされる「共通の世界」を作り上げていくプロセスが、コミュニケーションの語源だという。
要約も使いようだ。
『私の手に触れていたMさんが指点字を打った。「M:I君はいつおうちに帰るの? I:うーんとね、二二日に帰ろうと思うんだけどね」 その瞬間、私の内部で何かがスパークした。この短いやりとりの中で、二つの新しいことが起こった。第一に、私に手を触れている人が、自分と別の人との会話を私に伝えたということ。〜中略〜 第二は、自分と相手との発言をはっきり区別し、しかも”直接話法”で伝えたということである。例えば、〜中略〜 それまでは次のように伝えられることがほとんどだった。「I君は二二日におうちに帰るんですって」』
出典元:「盲ろう者とノーマライゼーション」P87 福島 智 著
福島氏は”直接話法”の大切さを唱える。会話は、導かれた結論だけではなく、その過程における発言者の感情の起伏など多重的な情報で構成されている。要約は、それを限定して伝えてしまうことになる。
ビジネスの世界で要約は、必須だ。さまざまな場面で求められる。効率の局限化で利益をあげる企業の宿命からすれば当然のことだ。上司・同僚・顧客に対して、的確に、短時間に内容を伝える必要がある。そして要約が的確にできるかどうかは、物事の本質を捉えられているかどうか、でもある。何を残して、何を省いていいのか、要約のプロセスには、こうした情報の取捨選択が行われている。
しかし、これを家庭に持ち込むと少々まずい。いやかなりまずい。要件だけを要約して伝え合う夫婦の会話がなんと味気ないものか。自分のことは棚に上げて、相手にそうされるとかなり苛立ちを覚えてしまう。たわい無い、そして結論もない会話、でもその行為自体が夫婦間では価値があるように思う。
手話通訳ではないがパソコン通訳はしたことがある。キー入力の早さには自信があるが漢字変換がうまくいかない。(因に字幕制作の現場では、番組内容に応じて適切な漢字が上位候補になるよう事前調整している)そして適切な漢字を選んでいるうちに、会話はどんどん先を行く。結果、エイッと要約してしまうのだが、聴覚障害者からは「誤変換は気にしなくていいから打ったまま進めて欲しい」と諭される。正確に伝えることより、場の雰囲気に沿って柔軟に伝えた方が喜ばれる。
本来、コミュニケーションとは「共同化」すなわち「まじり、共有しあい、共通の物を作り出す」という意味だという。情報のやりとりではなく、これによってもたらされる「共通の世界」を作り上げていくプロセスが、コミュニケーションの語源だという。
要約も使いようだ。
by isoamu
| 2009-05-25 23:29
| ユニバーサルデザイン