コミュニケーション 〜共通の世界を作り上げるプロセス〜
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盲ろう者とノーマライゼーション―癒しと共生の社会をもとめて (明石ライブラリー)
福島 智 / 明石書店
盲ろう者にとってこの世界は”静かすぎる”のだという。振動、陽射し、香り、椅子の感触、ただそれだけ。この世界にいるのに”絶対的な孤立感”を強いられるのだという。
この世界との接続は他者との繋がり(コミュニケーション)によってもたらされる。他者からの情報によって、この世界を認識し、他者とこの世界を共有する。本来、コミュニケーションとは「共同化」すなわち「まじり、共有しあい、共通の物を作り出す」という意味だという。情報のやりとりではなく、これによってもたらされる「共通の世界」を作り上げていくプロセスが、コミュニケーションの語源だという。(Communityが共同体という意であることにも由来するのか)
健常者を耳と目をふさいで生活させるという実験で、ほとんどの被験者が2・3日が限度。また例外なく精神破綻をきたし幻覚を見るのだという。ここでも人間にとってコミュニケーションとは情報共有の手段に留まらず、それ自体が自己を形成する本能的欲求のものだと知る。
盲ろうという障害の研究は、コミュニケーションへの本質的な問いかけに他ならないと著者は唱える。盲ろう者を取り巻く福祉環境、そこからの可能性にも触れるなど多面的な論説が展開されている。