2009年 02月 10日
Social Design 〜デザイナーの倫理観〜
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「Social Design」社会性のあるデザインということか? 社会をデザインするということか?
2月8日インターナショナル・デザイン・リエゾンセンターで、いくつかの事例が紹介された。2006年に創刊された「GOOD」という雑誌は、エコロジーなど社会性のある課題を美しくCoolなデザインで紹介する。創立者は「良いこと(GOOD)はしたいが、あまり堅苦しいイメージはさけたい」という想いがあったそうだが、それは以下の言葉に典型される。
I don’t want to be part of your revolution if I can’t dance.
ダンスが出来ないのなら、君の革命には参加したくない。
一見、軽薄とも捉えられかねないが、社会性ある課題を自分たちの目線で素直にとらえようとしている点がいい。従来も社会的な問題を取り上げるメディア/組織はあったが、いくぶんシリアス過ぎて(当然シリアスであるべきだが)自分たちの感覚との距離があったように思う。GOODは、シリアスな事象も斬新なデザインで仕立てることで、”良いこと(GOOD)をすることはとてもクールなこと”というように、今までの価値観をデザインでシフトしようとしている。
Think the Earthプロジェクトは、創立当初、イメージカラーとしてグリーンを使いたくなかったという。周知の通り環境に対する取り組みはスローライフ、ロハスなど様々なものがある。Think the Earthでは、環境問題や社会問題について行動するきっかけをデザイン(Think the Earthではクリエイティブと表現)によって誘発しようとしているが、従来の”環境問題=グリーン”というステレオタイプ的な価値観とは一線を画し、デザインによる新しい動機付けをしようとしている。
考えてみれば、デザインによって”括弧よくない”ものが”括弧よく”なったりする。そしてこれが結果として、今まで関心のなかった人が関心をもつようになる。デザインの行為自体は、プロダクトであったり、グラフィックであったり従来と変わらないのだが、デザインによって変えたいとする対象が社会問題に関係する点が、Social Designの本質であるように思う。産業の発展とともにデザイン行為は商品、サービスを売らんがための手段として成り下がった(と柳先生は嘆く)。これは産業と密接に結びついているからこその宿命ではあるが、それとは違う目的意識があるということだ。
このようにSocial Designをとらえると、社会/環境問題に限らず、デザインで価値観をシフトさせようとする活動には様々なものがある(上図参照:JIDPO矢島さん作)。ナガオカケンメイのD&Departmentも端的にいってしまえば”リサイクルショップ”だ。しかしリサイクル商品自体がクールであるという価値観をデザインしているように思う。そして結果としてロングライフにものを使い続けるという思考をユーザーの中に生み出している。狭義のデザインとは異なる印象を持つ向きもあると思うが、最近では藤田志穂さんが始めた「ギャル米」というのも、農業に対する価値観を大きくシフトさせようとしている。結果として、農業従事者を増やし食料自給率の向上につなげようとしている。
こうして考えると、そもそもデザインには人の価値観をコントロールする大きな力を有しているといえる。とするならば、そもそもデザイナーは高い倫理観を持ってデザインに取り組まなければならないはずだ。単に商品を売らんがためでなく、デザインによってどういう価値観を生み出したいのか、そしてそれがどういう生活/社会につなげたいのかという倫理観が、まずあって然るべきなのだろう。
先日、Tさんの声かけで、ブログで繋がっていたIさんと出会い、そしてJIDPOの矢島さんのサポートも受けながら、インハウスデザイナーの閉塞感を問題意識にした活動を始めた。インハウスデザイナーの活動を振り返ると、今回紹介したSocial Designとの距離を感じざるを得ないが、今の生活の基盤を構築したのはまぎれもなく現在の企業活動であることを考えると、ある意味、環境問題/社会問題の現況に存在している希有な存在であるともいえる。今後、私たちは定期的に六本木に集まることになった。
関連エントリー
・「Social Design」フォーラム開催決定!!
・Social Design - Design + Community + Social Impact
・Think the Earth オフィシャルサイト
・渋谷ギャル発、農業革命!? 稲作挑戦、秋に商品化
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2月8日インターナショナル・デザイン・リエゾンセンターで、いくつかの事例が紹介された。2006年に創刊された「GOOD」という雑誌は、エコロジーなど社会性のある課題を美しくCoolなデザインで紹介する。創立者は「良いこと(GOOD)はしたいが、あまり堅苦しいイメージはさけたい」という想いがあったそうだが、それは以下の言葉に典型される。
I don’t want to be part of your revolution if I can’t dance.
ダンスが出来ないのなら、君の革命には参加したくない。
一見、軽薄とも捉えられかねないが、社会性ある課題を自分たちの目線で素直にとらえようとしている点がいい。従来も社会的な問題を取り上げるメディア/組織はあったが、いくぶんシリアス過ぎて(当然シリアスであるべきだが)自分たちの感覚との距離があったように思う。GOODは、シリアスな事象も斬新なデザインで仕立てることで、”良いこと(GOOD)をすることはとてもクールなこと”というように、今までの価値観をデザインでシフトしようとしている。
Think the Earthプロジェクトは、創立当初、イメージカラーとしてグリーンを使いたくなかったという。周知の通り環境に対する取り組みはスローライフ、ロハスなど様々なものがある。Think the Earthでは、環境問題や社会問題について行動するきっかけをデザイン(Think the Earthではクリエイティブと表現)によって誘発しようとしているが、従来の”環境問題=グリーン”というステレオタイプ的な価値観とは一線を画し、デザインによる新しい動機付けをしようとしている。
考えてみれば、デザインによって”括弧よくない”ものが”括弧よく”なったりする。そしてこれが結果として、今まで関心のなかった人が関心をもつようになる。デザインの行為自体は、プロダクトであったり、グラフィックであったり従来と変わらないのだが、デザインによって変えたいとする対象が社会問題に関係する点が、Social Designの本質であるように思う。産業の発展とともにデザイン行為は商品、サービスを売らんがための手段として成り下がった(と柳先生は嘆く)。これは産業と密接に結びついているからこその宿命ではあるが、それとは違う目的意識があるということだ。
このようにSocial Designをとらえると、社会/環境問題に限らず、デザインで価値観をシフトさせようとする活動には様々なものがある(上図参照:JIDPO矢島さん作)。ナガオカケンメイのD&Departmentも端的にいってしまえば”リサイクルショップ”だ。しかしリサイクル商品自体がクールであるという価値観をデザインしているように思う。そして結果としてロングライフにものを使い続けるという思考をユーザーの中に生み出している。狭義のデザインとは異なる印象を持つ向きもあると思うが、最近では藤田志穂さんが始めた「ギャル米」というのも、農業に対する価値観を大きくシフトさせようとしている。結果として、農業従事者を増やし食料自給率の向上につなげようとしている。
こうして考えると、そもそもデザインには人の価値観をコントロールする大きな力を有しているといえる。とするならば、そもそもデザイナーは高い倫理観を持ってデザインに取り組まなければならないはずだ。単に商品を売らんがためでなく、デザインによってどういう価値観を生み出したいのか、そしてそれがどういう生活/社会につなげたいのかという倫理観が、まずあって然るべきなのだろう。
先日、Tさんの声かけで、ブログで繋がっていたIさんと出会い、そしてJIDPOの矢島さんのサポートも受けながら、インハウスデザイナーの閉塞感を問題意識にした活動を始めた。インハウスデザイナーの活動を振り返ると、今回紹介したSocial Designとの距離を感じざるを得ないが、今の生活の基盤を構築したのはまぎれもなく現在の企業活動であることを考えると、ある意味、環境問題/社会問題の現況に存在している希有な存在であるともいえる。今後、私たちは定期的に六本木に集まることになった。
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・Think the Earth オフィシャルサイト
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by isoamu
| 2009-02-10 00:22
| デザイン全般